Table of Contents
1 プロジェクトの概要
この案件では、以下の3種のロゴをそれぞれ20個ずつ、合計60個のキャップに刺繍します。
- The Carriage House:フロント、背面(旧車モチーフ)
- The Boat House:フロント、背面(ボートモチーフ)
- FDF:フロント、背面(ミニFDF)
フロントはキャップフープを用いてRicoma TCで進行。背面は小型のファストフレームと粘着式スタビライザーを使い、Ricoma EM-1010で効率化します。複数マシンで“アセンブリライン”のように並行作業することで、1時間あたり約10個のペースを実現しています(動画内の報告ベース)。なお、具体的な縫製速度やテンションなどの機械設定値は動画内に数値の明記がない部分があります。
プロジェクトのポイント
- フロント:キャップフープの正確な位置合わせ
- バック:Vノッチとセンターシームの一致+1インチ下げの統一
- クリップ・フレームとの干渉を事前にトレースで確認
- 段ボール等の残留物は糸切れの原因。必ず除去
クイックチェック
- フロント位置が全帽子で揃っているか
- バックはセンター縫い目とVノッチが一致しているか
- 下端から1インチの高さが全帽子で一致しているか
2 準備:道具・データ・段取り
本案件の装備と材料(動画に基づく)
- 主要機:Ricoma TC(フロント)、Ricoma EM-1010(バック)
- フーピング:キャップフープ(前面)、ファストフレーム(背面)
- 位置決め・固定:定規、バインダークリップ
- 安定剤:粘着式スタビライザー
- 帽子:ネイビー主体(一部タン)
データ準備
- 各ロゴのフロント・バック版を用意(FDF、The Carriage House、The Boat House)。ファイルの取り込みはPC側の刺繍ソフトでUSBに保存し、マシンにインポートします(コメント情報による)。
段取りの組み方
- ロゴごとにバッチ化(例:FDFを全数フロント→FDFのバック→次のロゴ)
- 2台運用の場合、キャップフープは各機に2つずつ付属するため、最大4個を一度に準備可能。入れ替えロスを最小化します。
注意
- 帽子の内側に製品用の段ボールやスペーサーが残っていないか必ず確認。残置すると糸切れが頻発します(後述の事例参照)。
プロのコツ
- バックの粘着式スタビライザーは、破れた箇所だけを小片で“継ぎ足し”再利用する方法がコミュニティで共有されています。材料の節約になります(コメント由来)。
チェックリスト(準備)
- USBに各ロゴの正しい版(フロント/バック)を保存したか
- キャップフープとファストフレーム、バインダークリップ、定規の準備
- 粘着式スタビライザーを背面用フレームに貼れるサイズにカット
- 帽子内の段ボールなど異物の除去
ここで、市場には刺繍用 枠固定台やhoopmaster 枠固定台などの補助治具もありますが、本案件では使用の説明はありません(関連製品として名称のみの言及に留めます)。

3 フロント刺繍:キャップフープで正確に
3.1 キャップフープの基本と固定の勘所
フロントはキャップフープに装着してから、Ricoma TCで刺繍します。ロゴは左前面パネルに配置。紙プリントのガイドで位置合わせし、テンションを均一に保って固定します。

クイックチェック
- フロントの中心線や縫い目とロゴが平行か
- 生地のたるみや過度な引っぱりがないか
なお、一般論として市場にはマグネット刺繍枠やクランプ枠など多様なフーピング手段がありますが、この案件ではキャップ専用フープで対応しています。

3.2 連携運用でテンポを上げる
2台のマシンを使えば、1台で刺繍中にもう1台のフープ入れ替え・セットが可能。各機付属のキャップフープが2個ずつあるため、最大で4帽を常時ローテーションできます。こうした“並行稼働”が、1時間あたり約10個という速度の土台になっています。

プロのコツ
- 同一ロゴをまとめて処理すると、糸換えや段取り替えの回数が減り、総時間が圧縮されます。
チェックリスト(フロント)
- プリントガイドで位置確認→試し1点でOKを取る
- 全数のフープ固定方向・向きを統一
- 刺繍後、糸始末と見栄えの簡易チェック

4 バック刺繍:ファストフレームで一気に効率化
4.1 なぜファストフレームが効くのか
バックの小ロゴは、ファストフレームに粘着式スタビライザーを貼り、バインダークリップで帽子を固定して進めます。これによりフーピングのやり直しが減り、背面特有の湾曲やシームをまたぐ刺繍でも位置が安定しやすくなります。

### 4.2 準備:スタビライザーと固定

- ファストフレーム裏面に粘着式スタビライザーを貼る(余端は折り返しでOK)
- バインダークリップで左右と前部を固定
- 帽子後ろのセンターシームとフレーム上部のVノッチを正確に一致
- 刺繍は下端から約1インチ上に入る想定で準備
ここで、他機種向けのマグネット刺繍枠 brother 用やマグネット刺繍枠 tajima 用なども一般に流通していますが、本案件では使用していません(名称紹介のみ)。

4.3 角度と反転、そしてトレース
バック下部に刺繍するため、デザインはマシン上で上下を反転させます。トレース時は必ずニードル1を選択してシーム上のセンターを合わせ、輪郭の“なぞり”でフレームやクリップとの干渉がないかチェックします。ここで干渉が出る場合は、帽子またはデザイン位置を微調整します。
クイックチェック
- センターずれ:Vノッチとシームが一致しているか
- 反転忘れ:下部刺繍なのに上下未反転になっていないか
- 干渉:クリップ・フレーム・帽子エッジにトレースが触れていないか

### 4.4 1インチ下げの測り方(定規)

マシン上で、汗止め(スウェットバンド)下端から1インチ上が刺繍位置の基準です。定規の目盛りにニードル先端を合わせて、必要な分だけ前後移動して揃えます。全数で同じ手順にすることで、個体差のない“揃い”が実現します。
補足
- トレース(輪郭)→コンター確認まで行い、干渉がなければ刺繍開始
- 刺繍後は、スタビライザーを破って取り除き、スウェットバンドを元に戻して終了
市場にはマグネット刺繍枠の他、Ricoma対応のricoma mighty hoop スターターキットのような選択肢もありますが、本案件ではファストフレーム+粘着式スタビライザーで完遂しています。
5 トラブルシューティングと時短の要点
5.1 糸切れが続くとき
症状:連続的な糸切れや糸ほつれ。 可能原因:帽子内部に段ボール(製品用スペーサー)が残っていたケースが実際に発生。針・糸・テンション調整より前に、物理的な異物を疑います。

対処:
- 帽子を外し、段ボールを完全に除去
- 再フーピングして再開
注意
- 異物があると摩擦や引っ掛かりで糸が裂けます。刺繍前の“目視&手触りチェック”をルーティン化しましょう。
5.2 バック刺繍の進め方
The Boat Houseの背面ロゴやThe Carriage Houseの背面ロゴも、同じ手順で安定して進行できます。フレーム干渉がないかを毎回のトレースで確認し、位置を一定に保てば、全数が揃った見栄えになります。


プロのコツ
- 粘着式スタビライザーは、破れた中央部に1"×4"程度の小片を貼って補修し、複数回使うという現場アイデアがコメントで共有されています。これにより材料消費を抑えつつ、保持力を確保できます。
5.3 スピードの目安と並行化
コメント情報では、運転速度はおよそ550〜600で運用したとのこと。刺繍の難易度や糸種によって変わるため、最初は保守的に設定し、干渉リスクや糸調子を見ながら上げていくのが無難です。なお、2台運用+フープ4個ローテーションにより、入れ替えロスが小さくなり、1時間あたり約10個の生産性につながっています。
6 仕上がりと作業スピードの目安
結果として、約6時間でほぼ60個(実数は追加分を含めて63個)を完了。FDFはフロントとバックがすべて終了済みで、The Boat HouseとThe Carriage Houseもフロントは揃い、バックを同手順で進めて完納しています。箱詰めしたFDFの完成品群は、フロント・バックともにクリーンで均一な仕上がりです。

価格設定(コメント情報)
- 客先持ち込み:フロント$10+バック$5の追加
- 24個以上のロット:フロント$15/個(バックは+$5で$20/個)
チェックリスト(仕上げ)
- バックロゴのセンターと1インチ下げが全数一致
- スタビライザーの残り・糸の飛び出しがない
- 納品前にフロント/バックの擦れや汚れを拭き取り
7 コメントから:現場の知見(針・糸・速度・価格・デジタイジング)
- 小さな文字の刺繍では、針サイズや糸の太さが重要。コメントでは本案件に関して65/9針と60番糸を使用と共有されています(別の文脈で40番+65/9の組み合わせ例も言及)。
- 速度の目安は約550〜600。難素材や小文字では、干渉と糸調子を見ながら慎重に。
- Flexfit系キャップのセンター刺繍は“可能”との見解。65/9針+バックアップ(安定剤)を用い、フロントをスチームやヒートで柔らかくする工夫も紹介されています(いずれもコメント由来)。
- デジタイジングは“帽子用”に行うのが前提。カーブを考慮し、中央から外、下から上へ縫うよう設計する点がフラット用と異なります。外注時は必要情報をしっかり伝えることが品質に直結。
- データの取り込みはPCの刺繍ソフト→USB→マシンという流れがシンプル。
- 粘着式スタビライザーは破れた箇所に小片を継ぎ足して再利用可。生産量が多いほど材料コストに効いてきます。
コメントからの補足アイデア
- テンプレートを作成し、開始位置にチャコで小さな点印を付けると、センタリングと高さの再現性が向上。
- マシン騒音に関しては、TCのほうがEM-1010より静かと感じるという感想も共有されています(個人の感想)。
なお、他社機器向けのフープやクランプ(例:マグネット刺繍枠 brother se1900 用、マグネット刺繍枠 tajima 用、マグネット刺繍枠)も市場には多数ありますが、本記事の手順と結果はRicoma TCとEM-1010+ファストフレームを前提に記述しています。製品名の列挙は、参考としての名称紹介に留めます。
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実施ステップのダイジェスト 1) フロント:キャップフープで位置合わせ→試し1点→量産 2) バック:粘着式スタビライザーを貼ったファストフレーム+バインダークリップ→Vノッチ×センターシーム一致→上下反転→ニードル1でトレース→定規で1インチ下げ→量産 3) トラブル時:まず異物(段ボール)有無→再フーピング 4) 品質検査:センター・高さ・干渉痕・スタビライザー残りの有無
最後に、位置決めを安定させる補助器具としてマグネット刺繍枠や刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠、固定支援の枠固定台なども一般に知られていますが、今回の成果は動画に沿って“キャップフープ+ファストフレーム”を正確に運用するだけで十分に達成できています。用途・機種に応じて最適解を選んでください。
