Table of Contents
1 プロジェクトの概要
バージェロ風のクロスステッチは、等間隔の段差を繰り返す幾何学模様です。本ガイドは、Hatch Embroidery 3 の Cross Stitch アドオンで手動設計し、EMX 形式で保存、Hatch に読み戻して PES に書き出し、実機で刺繍する一連の流れを自走できるようにまとめています。

1.1 何を作るか
・Cross Stitch アドオン上で 18 カウント(18 stitches per inch)の設定を用いて、5 目上がって折り返す基本のバージェロを作図します。 ・色は動画では赤・オレンジ・イエロー系の 4 色構成(冒頭で 4 色と言及)で進行します(具体色名の詳細はダイアログに準じます)。
1.2 いつ・どんな場面で有効か
・規則的な反復模様を素早く展開したいとき。 ・手描きの自由度を保ちながら、Rubber Stamp で整然と増殖させたいとき。 ・ソフトのシーケンス最適化を信頼し、ミスのない運針でスピーディに仕上げたいとき。
**注意** Hatch の Cross Stitch はアドオン機能です。別途購入・インストールが前提です(動画で明言)。
2 準備するもの
このプロジェクトで必要なのは、ソフト環境と最小限の素材だけです。

2.1 ソフトとアドオン
・Hatch Embroidery 3(本体) ・Cross Stitch アドオン(別プログラムとして起動)
2.2 データとファイル
・設計保存:EMX(Cross Stitch デザインのネイティブ) ・実機用:PES などミシン対応形式(動画では Brother へ PES 書き出し)
2.3 材料・道具
・刺繍用布(布カウント 18 を想定) ・刺繍糸(少なくとも 4 色) ・刺繍機(動画では Brother の刺繍ミシンを使用)
作業台の固定・位置決めを安定させたい場合は、ソフト外の物理サポートとして 刺繍用 枠固定台 を併用すると、毎回のフーピングが素早く再現性高く行えます(本編では具体機材名の提示なし)。
**チェックリスト(準備)**
- Cross Stitch アドオンが起動できる
- EMX 保存先を決めておく
- 布・糸・フープを想定に合わせて用意
3 初期セットアップ
Cross Stitch アドオンを Hatch から開き、設計環境を整えます。

3.1 Cross Stitch の起動と基本設定
・Hatch の Design Space → File → Cross Stitch でアドオンを起動。

・Thread Colors(糸色チャート)を開いて必要な色を登録(動画では標準のまま開始)。
**プロのコツ** 糸色は後から増やせます。まずは 2〜3 色で流れを確定し、Rubber Stamp で広げる前に配色リズムを試すと破綻が少ないです。
3.2 Fabric Count と Grid の一致
・Fabric Count:18 stitches per inch を選択。 ・Grid:線間隔も 18 に合わせる(カウントの数え間違いを避けるため)。 本文の通り、数値が小さいほど物理サイズは大きくなりますが、ステッチ数そのものは変わりません。
3.3 Hoop(フープ)サイズ
・Options → Hoop で 100×100mm を選択(動画で選択を確認)。 ・この設定はアドオンに入るごとに再指定が必要な点に注意。
**クイックチェック**
- Fabric Count と Grid 間隔が一致している
- Hoop が 100×100mm に設定されている
- Thread Colors が最低限そろっている
4 バージェロパターンの設計
ここから作図。Picture(参照画像)は使わず、Pencil で手描きします。

4.1 Pencil で手描きプロット
・Grid を表示、Pencil を選択。 ・5 目カウントで上へ伸ばし、反対側で下るリズムを繰り返す(1・2・3・4・5 のカウント)。 ・赤→オレンジ→イエロー…のように色を切り替えて段差を重ねていく。

・誤置きは右クリックで 1 目単位で削除。
Rubber Stamp で量産する前に、1 セグメントを整えるのが肝。必要なら仮フープで試し縫いを想定し、設計を詰めます。ここで布押さえの安定を高めたい場合、厚手素材や段差が大きい場面では マグネット刺繍枠 を活用すると生地のズレを抑えやすくなります(本動画では通常フープの使用シーンが中心)。
**クイックチェック**
- 5 目の縦列と折り返しが規則的に続いている
- 色切替の境目が乱れていない
4.2 Rubber Stamp で水平に複製
・Polygon で完成セグメント全体を囲み、Enter で確定。 ・Rubber Stamp をクリックし、横方向に配置していく。

・選択漏れがあると継ぎ目が崩れるので拡大して確認。
**注意** 選択に抜けがあると後の縦複製でも欠損が反復します。気づいたらすぐに削除→再スタンプで修正しましょう。
4.3 縦方向の複製と欠けの補填
・水平に並べた行全体を Polygon で選んで Rubber Stamp し、下方向に複製。

・Auto-Select で要素単位を拾い、端の欠落を素早く埋める。 ・細部は Pencil で 1 目ずつ補正し、色の整合を保つ。
**プロのコツ** 端の「段」の頂点は、隣接行の山と谷が噛み合うよう、1 目単位の凹凸で均し込みます。行の開始位置が 1 目ずれるだけで見映えに影響します。
**クイックチェック**
- フープ内が均一に埋まり、白抜けがない
- 色の山谷が段ごとに滑らかに連なっている
5 EMX 保存と Hatch への受け渡し
設計が整ったら EMX で保存し、Hatch 本体に戻します。

5.1 EMX に保存
・File → Save Design → 名前を付けて EMX で保存(例:Bargello)。 ・Rubber Stamp の操作痕で余計な残骸が上部に生成されることがありますが、Hatch 本体で削除できます(動画でも後処理)。
5.2 Hatch に挿入して整える
・Hatch 本体で Insert Design → 先ほどの EMX を開く。

・「Grade A/B ではないためリサイズに制限」の通知が出ますが、サイズ前提で設計していれば問題ありません。 ・Ungroup して不要要素を選択削除。Center All で中央配置。 ・Stitch Player で縫い順と色順を再生し、想定通りか確認。

**プロのコツ** シーケンスは Cross Stitch 側の最適化を「信じる」ほうが安定します。むやみに再シーケンスすると移動が増え、クロスの上糸・下糸の出方が乱れやすいと動画で示唆されています。
**チェックリスト(データ受け渡し)**
- EMX を正しく保存できた
- Hatch に挿入後、不要ステッチを除去した
- 中央揃えと Stitch Player チェックを済ませた
6 ミシン刺繍の実行
PES へ書き出し、刺繍機で順次縫って仕上げます。

6.1 書き出しとセット
・File → Export Design で PES に書き出し。 ・ミシンへ転送し、布を適切にフーピングしてスタート。

・4 色のシーケンスで順次運針。スピーディかつ精密な縫い上がりが期待できます。
フープサイズが 100×100mm 前後の場合、サイズ感の目安として brother マグネット刺繍枠 10x10 を想定しておくと、パターン設計時の入り切りの判断がしやすくなります(動画は一般的フープで実施)。
6.2 実機運用の勘どころ
・色替えの前に、糸端の処理と布面のほこりを軽く払っておく。 ・途中停止した場合、前後 1〜2 ステッチ分を Stitch Player で確認してから再開するとズレが少ないです。
なお、布の保持力や位置決めをさらに高めたい用途では マグネット刺繍枠 brother 用 や brother 刺繍ミシン 用 クランプ枠 のように生地の厚みや形状に合った固定手段を検討すると良いでしょう(本編での具体使用は未紹介)。
7 仕上がりチェック
完成後の見た目と触感を評価します。

7.1 よい仕上がりの指標
- クロスの交点が潰れず、上糸の重なりが均一
- 行の山谷が連続して見える(バージェロの波がつながっている)
- 糸の引き締めが適度で、裏面の締め跡が目立ちすぎない
7.2 問題のサイン
- 行のつなぎ目で 1 目の段差ズレ(設計段階の選択漏れが原因)
- 糸色の段替えで濁りや食い違い(色指定ミス、糸替え順の確認不足)
- 布のタワミや波打ち(フーピングや押さえ不足)
仕上げの一手として、次回再現を容易にするために使用フープ・布カウント・糸順をメモ化しておくと、別柄への応用にも役立ちます。よく使うサイズ体系に合わせて brother 4x4 刺繍枠 系のテンプレートを持っておくと、設計→出力の見積もりがスムーズです。
8 トラブルシューティング・リカバリー
症状→原因→対処の順で整理します。
8.1 水平方向の継ぎ目が合わない
- 可能原因:Polygon の選択漏れ/Rubber Stamp 時の配置ズレ
- 対処:拡大表示で選択し直し、欠け部分は Auto-Select で最小単位を拾って再スタンプ。必要なら Pencil で 1 目補正。
8.2 縦方向の段が噛み合わない
- 可能原因:複製ブロックの開始位置が 1 目ずれた
- 対処:縦複製前に、行頭の基準(山の頂点)を 1 目合わせ。Stitch Player のプレビューで段差位置を確認。
8.3 色順が乱れて時間がかかる
- 可能原因:Hatch で独自に再シーケンスした
- 対処:Cross Stitch 側のシーケンスを信頼。Hatch では基本的に削除と中央揃え、プレビューに留める。
8.4 生地の波打ち・ズレ
- 可能原因:フーピングのテンション不足/素材の厚み差
- 対処:フープを締め直す。厚手・凹凸素材なら クロスステッチ用 マグネット刺繍枠 や hoopmaster 枠固定台 などで保持・位置合わせの再現性を上げる(本編では具体機材使用の描写なし)。
**クイックチェック(回復後)**
- 欠け目が完全に埋まったか
- Stitch Player で縫い順が想定どおりに戻ったか
- テスト縫いの小片でテンションと押さえを確認したか
9 コメントから
公開後の反応は総じてポジティブで、チュートリアルのわかりやすさが評価されました。制作者からも丁寧な謝意の返信があり、設計〜刺繍までの流れが無理なく再現できることが示唆されています。なお本ガイドでは、動画内で触れられた要点をさらに体系化し、なぜその順序・設定なのかの理由付けと自検方法を補強しました。
1.3 なぜこの順序なのか(補足の整理)
- 先に Fabric Count と Grid を一致させる:手描き時のカウントが目視で一致し、計数ミスが起きにくい。
- 小さなセグメントを完成→Rubber Stamp:不完全なセグメントを増やすと修復コストが高い。
- EMX 保存→Hatch で清掃→Stitch Player:設計由来の残骸を除去してから配列を検証すると、ミシン側での意図しない停止が減る。
最後に、作業効率や固定力をさらに高めたい場合は、用途に応じて マグネット刺繍枠 や マグネット刺繍枠 brother 用 などの選択肢も検討してみてください(本動画の必須構成ではありません)。
