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1 プロジェクトの概要
Urban Threads のユニコーン(PES 形式)を Hatch Embroidery に読み込み、配色をスルキー糸見本に合わせて再設定し、スタンダードシェイプからフレームを追加。さらにプリデジタイズ書体で2行の文字を入れ、縫い順をまとめて効率化します。最終的に PES で書き出し、Brother Innov-is 750E で実際に刺繍します。
1.1 いつ・なぜこの手法か
・既存の良質な市販デザインを“自分仕様”にしたいとき。 ・スレッド数を絞りたい、糸替え回数を減らしたいとき。 ・文字やフレームを加えてギフト向けに仕上げたいとき。 ・実機前に Stitch Player で問題点を先読みしたいとき。

1.2 ソースと完成像の把握
元デザインは Urban Threads(“Winter Glam Unicorn”)。サイズとフォーマットが複数あり、今回は Brother 用に PES を購入しています。サイトにはステッチ数・カラーチャートなどの参考情報も掲載されています。

クイックチェック: ・PES 形式で購入できているか。 ・手持ちフープに入るサイズか(動画では 101×128mm を表示して確認)。 ・配色は手持ちの糸に落とし込めるか。
2 準備するものと前提条件
・Hatch Embroidery(Digitizer レベルを使用) ・PES 形式のユニコーンデザイン(Urban Threads) ・Güttermann Sulky 糸(動画では5色程度を採用) ・Brother Innov-is 750E(実機ステッチ) ・生地/フープ
注意:Hatch 内でのリサイズには品質低下リスクが伴います。動画でも読み込み時に“推奨百分率を超える拡大は品質劣化の恐れ”という警告が表示されています。極端なサイズ変更は避けましょう。
プロのコツ:実機フープの“表示サイズ”を早めにセットし、TrueView で見た目とスケール感を確認しておくと、後からの作業全体が安定します。
チェックリスト(Prep)
- PES データを用意
- 手持ち糸の色見本を決定(スルキー)

- フープサイズを把握(例:101×128mm)
- 実機側が PES を受け取れる状態かを確認
3 セットアップ:デザイン読込と初期確認
3.1 PES の読み込みと警告の理解
Hatch を起動し、Open Design からユニコーン(PES)を読み込みます。Hatch のネイティブ形式ではないため、読み込み時に拡大縮小に関する注意が出ます。ここで無闇にサイズ変更しないのが品質保持のカギです。


3.2 カラーとシーケンスの現状把握
読み込み直後に Sequence(縫い順)とカラー変更回数を観察します。市販デザインは色数・色替えが多いことがあるため、後工程で“まとめる”余地を見積もります。Hatch の TrueView 表示を活用し、見た目と糸の切り替わり位置を俯瞰しましょう。
クイックチェック:
- Sequence タブで色ブロックの多さを確認
- 色ごとの部品が散らばっていないか把握
- フレームや文字を加える余白があるか
ヒント(道具周辺):硬い・厚い生地を使う場合は、マグネット刺繍枠 を用いるとフープ圧を分散しやすく、位置合わせも安定しやすくなります(動画では通常フープを使用)。
4 再配色と縫い順の最適化
4.1 スルキー糸見本で配色を再設計
Hatch のカラーチャートから Güttermann Sulky を選択し、手持ちの糸番号を入力して各パートを再塗り替え。Ctrl キーで複数部品を一括選択し、関連部位を同色でまとめると効率的です。


プロのコツ:色替え回数を減らす視点で配色する。後で Sequence で色の並びを集約しやすくなります。
4.2 まとめ方=“色×部品”を束ねる
配色を終えたら、Sequence で同色を近接させるように並べ替えます。無駄なトリムや移動が減り、仕上がりの糸浮きリスクも低下します。見た目は

のように、色面が整理されているのが理想です。
注意:ここでの並べ替えは後工程のフレーム・文字入れ後にも再実施します。全体最適の視点で“最後にもう一度”順序を見直す前提で進めましょう。
チェックリスト(Recolor & Sequence)
- スルキー色見本を選択済み
- Ctrl 選択で関連部位を一括再配色
- Sequence で同色を近接配置
- TrueView で色の乗り・重なりを確認
補足(セッティング支援):量産や再現性重視なら、刺繍用 枠固定台 を使って毎回同じ位置にフープをセットすると、試し縫いのバラつきが減ります。
5 フレームと文字入れで仕上げる
5.1 フレームの選択・配置・回転
Digitize の Standard Shapes からフレームを選び、フープ上でクリック→Enter で配置。Select ツールで回転90°、塗りを Outline に切り替え、ノードでサイズを追い込みます。中心とプロポーションを確認し、ユニコーンを引き立てる“余白”を確保しましょう。


プロのコツ:最初から塗りではなく Outline にする。無駄な密度や重なりを避け、縫製時間と糸消費を抑えられます。
5.2 アウトラインの多層化とステッチ種
Create Layouts の Create Outlines で Offset 2mm・Count 1 を指定し、外周に2本のアウトラインを追加。外側を Single Run、内側を Triple Run に設定します。色もスルキーから選び、Sequence で他の同色と連携するよう順序を整理します。

クイックチェック:
- 2mm のオフセットが窮屈すぎないか
- Outer=Single、Inner=Triple になっているか
- 同色パートと連携する順序に並べたか
5.3 文字入れ:2行構成と書体選択
Lettering ツールで1行目「If you can be anything, be a」を入力し、プリデジタイズ書体から選択・配置・サイズ調整。続けて2行目「UNICORN」を Antique Rose で設定し、全体のバランスを整えます。


注意:プリデジタイズ書体は縫い品質が安定します。TrueType の自動変換も可能ですが、期待通りのステッチになるかは都度検証を。
5.4 アラインと Break Apart のタイミング
Align and Space で全要素を垂直整列。次に UNICORN を選んで Edit Objects の Break Apart を実行し、1文字ずつ独立オブジェクト化します。これは各文字を別色にしたいからで、一括のままだと文字と装飾(花)が同色変更されてしまいます。

プロのコツ:Break Apart は“最後の文字調整が終わってから”。分解後はテキストとしての再編集ができません。文字列・書体・サイズを確定してから実行しましょう。
チェックリスト(Frame & Lettering)
- フレームは Outline 指定・回転・サイズ良好
- Create Outlines:2mm/Count 1 で追加済み
- Outer=Single Run/Inner=Triple Run
- 文字2行の視認性、周囲との余白
- Align 済み、Break Apart の順序ミスなし
補足(固定・保持具):分厚いトートやキルティングなどは、マグネット刺繍枠 brother 用 のような磁力フープを活用すると跡が付きにくく、テンションも安定します(本プロジェクトは通常フープで実施)。
6 シミュレーションから実機ステッチへ
6.1 Stitch Player で疑似縫製
完成見込みになったら Stitch Player で全体を再生。縫い順の理屈が破綻していないか、無駄なジャンプや重なり、刺し戻りや過度の密度がないかをチェックします。ここで気づいた点は、Sequence やステッチ種・色で修正して再確認します。

注意:シミュレーションで気になる箇所は“必ず”修正。ここを省くと、実機での糸切れや密度ムラに直結します。
6.2 書き出しと実機縫製
問題が解消されたら PES でエクスポート。Brother Innov-is 750E に転送し、フープに生地をセットして刺繍開始。糸替えの指示に従い、各色をスムーズに切り替えます。縫製中はテンションと糸走行、布送りの安定を視認。最終色まで進めれば完成です。

プロのコツ:ミニサンプルを同じ生地で一度縫っておくと、本番での色味・密度・順序の“体感”が得られます。複数回量産する場合は、hoopmaster 枠固定台 のような治具で位置を標準化すると効率が上がります。
チェックリスト(Export & Stitch)
- Stitch Player を最後まで通したか
- PES 形式で正しく書き出し
- 実機でのテンション・糸切れ・引き攣れなし
- 糸替え回数は想定内か(Sequence 最適化の成果)
補足(応用のヒント):ワイドなフープを使う場合、brother 5x7 マグネット刺繍枠 のようにサイズに合った磁力フープでホールドすれば厚手素材でもシワを抑えやすくなります(本プロジェクトの具体使用は動画に未記載)。
7 品質チェック:途中と最終仕上がり
7.1 中間チェック(色ごと)
- 同色グルーピングの結果、無駄な移動が減っているか
- 文字の可読性(サイズ・太さ・密度)
- フレームの多重ライン(Single/Triple)の出目が均一か
7.2 最終チェック(取り外し前)
- 全色の重なりに乱れや隙間がないか
- 文字とユニコーンの視線・余白のバランス
- 糸渡りの不要な“浮き”が表出していないか
- フープ跡・生地歪みがないか(必要なら冷却後に整える)
クイックチェック:
- TrueView の印象と現物が一致している
- フレームの角で縫い寄りやバタつきが出ていない
- 裏面の糸密度が極端に偏っていない
補足(運用面):複数のロゴや名入れを同じ基準で量産するなら、brother 刺繍ミシン 用 クランプ枠 を使って位置決めを簡略化する方法もあります(動画では扱っていません)。
8 トラブルシューティングとリカバリー
症状:糸替えが多すぎて時間がかかる
- 可能原因:配色時に“似た色”を統合しなかった/Sequence で同色をまとめていない
- 対処:近似色を一本化し、Sequence で同色を連続配置する
症状:文字の輪郭がギザつく/密度が重い
- 可能原因:TTF 変換でステッチが過密/サイズが小さすぎ
- 対処:プリデジタイズ書体に変更、またはサイズを見直す
症状:フレームが主張しすぎて本体が埋もれる
- 可能原因:フレームの太さ・色が強すぎる
- 対処:Single/Triple の役割を見直し、色コントラストを調整
症状:実機で糸切れが頻発
- 可能原因:密度過多/縫い順の飛びが多い
- 対処:Stitch Player で問題部位を特定し、ステッチ種や順序を調整して再エクスポート
症状:サイズ変更で品質劣化
- 可能原因:推奨百分率を超える拡大・縮小
- 対処:サイズは最小限に留める。大幅変更は再デジタイズを検討
回避の型:
- “Break Apart は最後に”の原則を守る
- 毎章末のチェックリストを実施
- Stitch Player を本番前に必ず通す
応用(複数箇所配置):同一フープ内で位置をずらしながら複数回刺繍する場合は、ミシン刺繍 マルチフーピング の手順を採ると無駄が少なくなります(本プロジェクトでの具体フローは動画に未記載)。
9 コメントから
視聴者からは作品と解説への好意的な反応が寄せられています。特に配色のまとめ方と、Stitch Player での事前確認の有効性が高く評価されました。今後の制作でも、配色×縫い順の一体最適化と、Break Apart のタイミング管理を徹底することで、安定した仕上がりが期待できます。
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実践の指針(総まとめ): 1) 最初に“何を変えるか”を定義(配色・枠・文字・順序) 2) スルキー見本で配色、Sequence で色を束ねる 3) フレームは Outline+Create Outlines で多層化、ステッチ種を役割分担 4) 文字は Align→Break Apart→個別再配色 5) Stitch Player で最終確認→PES へ書き出し→実機へ
最後に、厚手素材や生地の都合でフーピングが難しいときは、マグネット刺繍枠 brother 用 などの磁力フープや、再現性重視のセッティングには 刺繍用 枠固定台 の導入を検討するとよいでしょう(本プロジェクトでの使用有無は動画では明示されていません)。
