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1 プロジェクトの概要
フラット刺繍は、平面の布に対して刺繍機が自動でステッチを施す最も基本的な手法です。JINYUのマルチヘッド機では、複数のヘッドが同時に同じデザインを縫うため、量産や均一品質に向きます。ここで扱うワークフローは、図案の選択から色・針の割り当て、作業領域(フープ)内での適合チェック、ボーダートレース、そして縫製開始までを一気通貫で進めるものです。

1.1 このガイドが解決すること
- 初めてのオペレーターでも、4つの節目で迷わず判断できるようになります。
- ピンク表示(はみ出し)→センタリング→ホワイト表示(適合)という画面サインの意味を、現物のフレームと結び付けて理解できます。
- 色と針の割り当て順が図案の配色通りに動くよう、操作意図を整理できます。
1.2 適用シーンと制限
- 対象はフラット刺繍。立体物(帽子など)や特殊枠の詳細は本稿では扱いません。
- 動画内で機種の型番や寸法値は明記されていません(幅・高さ・ステッチ数の具体値は画面上で確認する手順のみ示されています)。
- 布地は事前にフレームへ装着済みが前提です。
2 準備するものと前提条件
JINYUのマルチヘッド刺繍機、タッチスクリーン操作環境、そして刺繍デザインファイル(例:jin126.DST)が必要です。布はすでにフレームへ装着(フーピング)されていることが前提で、作業台周辺を安全に保つためのスペースも確保します。

2.1 必要な道具・ファイル
- 刺繍機(JINYUマルチヘッド)
- タッチスクリーン
- 刺繍デザインファイル(例:jin126.DST)
- 刺繍糸(配色に応じて)
- フレーム(実機と画面の作業領域が一致)
2.2 前提条件
- 布地はフレームに装着済み(動画では装着済みの状態から開始)。
- 図案は機械のライブラリに保存されているか、読み込み済みであること。
2.3 作業環境のポイント
布の張りは均一で、フレームの締め付けが過剰・不足になっていないかを確認します。安定した作業のために、必要に応じて刺繍用 枠固定台を活用し、アイテムごとの位置合わせを再現しやすくするとよいでしょう。

- クイックチェック:
- 図案ファイルが正しいフォルダにあるか
- 糸が各針に正しく通っているか(色替え時のトラブル防止)
- フレームと布の張りにムラがないか
3 初期セットアップ(タッチスクリーンの基本操作)
タッチスクリーンからデザインライブラリを開き、縫いたい図案を選択します。選択後は、画面で色数・ステッチ数・幅・高さなどのパラメータを確認します。数値自体は動画では特定されていませんが、ここで“想定と一致しているか”を点検してから次に進みます。
3.1 図案の呼び出し
ライブラリ画面で目的の図案をタップし、選択がハイライトされていることを視認します。これがステップ1の完了目安です。

- クイックチェック:
- 目的の図案がハイライトされている
- プレビューが正しい(色や形が合っている)
3.2 パラメータの確認
“デザイン情報”パネルで、色数、ステッチ数、幅・高さが表示されます。ここで想定と異なる場合は、縫製前に設計データを見直す必要があります。動画では数値の詳細は読み取りづらいものの、確認手順自体は明確に示されています。

- 注意:数値が極端に大きい場合、フレームの作業領域からはみ出す可能性が高くなります。
- チェックリスト(セットアップ段階の終わりに)
- 図案選択:ハイライト済み
- パラメータ:色数・ステッチ数・幅・高さを確認
- 誤選択なし:別デザインと取り違えていない
4 4ステップ実行ガイド
ここからは動画の流れに沿って、フラット刺繍の核心となる4ステップを順番に進めます。
4.1 ステップ1:ライブラリからデザインを選ぶ
ライブラリへ移動し、目的の図案をタップして読み込みます。選択後はプレビューで“選ばれていること”が明確に示されます。
- 期待される結果:選択した図案が画面にロードされる。

4.2 ステップ2:デザイン情報(色・ステッチ・寸法)の確認
続けて、画面の情報パネルで色数、ステッチ数、幅・高さを確認します。ここで異常がなければ次へ進みます。
- 期待される結果:パラメータに問題がなく、設計意図に合致している。

4.3 ステップ3:色と針の割り当て(カラーシーケンス)
デザインの各色を、実機の特定の針番号に割り当てます。動画では、色1→針1、色2→針4、色3→針1、色4→針4の順で割り当て操作が示されています。実際の現場では、機械のスプール配置(糸の物理的な並び)と合うように割り当てておくと、色替えの混乱を避けられます。
- 期待される結果:全ての色が所定の針へ割り当てられ、意図した順で縫製される。

- プロのコツ:配色が多い場合は、画面メモだけでなく紙の配色表を横に置くとミスが減ります。
この割り当ての際、作業効率を高めたいならマグネット刺繍枠で安定させたフーピング環境を作り、色替え時の布ずれを根本的に抑えるのが有効です。

4.4 ステップ4:作業領域への適合確認
デザインがフレームの作業領域内に収まっているかを、画面で確認します。動画では“ピンク表示=はみ出し、ホワイト表示=適合”という明確なサインが示されています。最初はピンクで表示され、センタリング操作を行うとホワイトに変化しました。
- 期待される結果:ピンクの状態から、センタリング後にホワイトへ変化し、適合が視覚的に確認できる。

- 注意:ピンク表示のまま進めると、フレームや押さえと衝突・空縫い・縫い外れのリスクがあります。
さらに、実機のフレームとデジタル作業領域が“同じ範囲”であることを、視線で往復確認してから先へ進みます。

4.5 トレース(ボーダー確認)
画面のボタンを押して、フレームをデザイン輪郭に沿って移動させます。これにより、実際の布上で刺繍位置が適切か、物理的な衝突がないかを事前に確認できます。
- 期待される結果:フレームが輪郭通りに動き、はみ出しがないことを“目で”確信できる。

- プロのコツ:量産時は、最初の1枚で必ずトレースを実施。ヘッド間のわずかな個体差や生地の張りの差を吸収できます。
ここで、頻繁にアイテムを載せ替える現場ではhoopmaster 枠固定台で位置決め治具を統一すると、トレースの再現性が高まり、作業者間で品質を均一に保ちやすくなります。
4.6 スタート
セットアップ画面を閉じ、スタートボタンを押します。以降は自動でステッチが進み、割り当てたシーケンス通りに色替えが行われます。
- 期待される結果:機械がスムーズに縫い始め、色替えが設定順に進む。

- クイックチェック(スタート直後):糸の流れが滑らか、針の動きに異常音がない、糸抜け・糸切れなし。
5 仕上がりチェックと合否基準
縫製中は、画面の進捗表示や布上の実際のステッチを観察します。初色(動画ではイエロー、針1)から形が現れ、続いて他色が順次重ねられます。縫いズレや糸張りの不均一は早期に気付くほどリカバリーしやすいのが鉄則です。

5.1 進捗の見方
- 画面:現在のステッチ位置、完成部位の色分け、ステッチカウントやおおよその時間が示されます。

- 実物:布地表面の糸の密度、縫い目の方向、縫い縮みの発生有無を確認します。
5.2 合格の目安
- デザインの端がフレームに当たっていない(ボーダートレース時点から一貫)。
- 色替えが設定順で正しく行われ、意図した配色になっている。
- ステッチが途切れない、タタキやサテンが均一。
5.3 うまくいった状態のサイン
- 縫製音が一定で、無理な引っかかりがない。
- 糸の張りが整っており、段差や波打ちが少ない。
ここで、量産や並行作業時はマグネット刺繍枠 brother 用を使ってアイテムの着脱を素早くできると、1サイクル当たりの段取り時間を短縮しやすくなります(本動画ではブランド指定はないものの、同様の運用原理は共通です)。
6 結果のイメージとその後の流れ
このプロセスを完了すると、選択した図案が布の上に配色順で縫われ、画面と実物の進捗が一致していきます。完成後は、次のアイテムに移るか、別色や別図案で同手順を繰り返します。JINYUのマルチヘッドでは複数枚を同時に加工できるため、段取りの標準化が品質と歩留まりに直結します。
- プロのコツ:配置基準点(例えば左下基準など)を現場で統一し、トレース時の確認発話(“左下クリア、右上クリア”等)を決めておくと、チームでの認識齟齬を避けられます。
さらに、他機や他現場での互換性を視野に入れるなら、一般的な刺繍枠規格や保管ルールをチームで共有しておくと良いでしょう。フレームの傷や歪みは、作業領域の誤差や布ずれにつながるため、定期点検も合わせて運用標準に組み込んでください。
7 トラブルシューティングと復帰手順
実務では、画面表示や布上の挙動で“予兆”を捉え、縫製前に回避するのが理想です。動画で示されたサインを手掛かりに、症状→原因→対処の順で整理します。
7.1 症状:画面でデザインがピンク表示
- 可能原因:作業領域からのはみ出し/位置ズレ/サイズが大きすぎる。
- 対処:センタリング操作でデザインを作業領域中央へ送り、ホワイト表示へ変化するか確認。変化しない場合は、サイズ調整(縮小)や再配置を検討(動画ではセンタリングで解決)。
7.2 症状:ボーダートレースでフレーム端に近い
- 可能原因:位置決めの誤差、布の張りムラ。
- 対処:フレーム位置の微調整、布の再テンション。必要に応じてマグネット刺繍枠 使い方を見直し、ワークの段取りを安定化。
7.3 症状:色替えが意図と違う
- 可能原因:色→針の割り当て順の誤り、糸の物理配置と画面設定の不一致。
- 対処:画面のカラーシーケンスに戻り、色1→針1、色2→針4…のように再設定。物理配置のラベル化で再発防止。
7.4 症状:縫製中の異音・糸抜け
- 可能原因:糸のテンション不良、糸掛け経路の乱れ、布の引っかかり。
- 対処:一時停止し、糸掛けとテンションを点検。必要に応じて布の張りと作業領域を再確認(トレースを再実施)。
7.5 症状:同じ図案で量産すると品質がばらつく
- 可能原因:アイテムごとの装着位置の微差、作業者による段取り差。
- 対処:位置決めを治具化。例えばtajima 刺繍枠など他社機運用も含め、治具思想は共通なので、現場に合う基準板や定規を使い、毎回同じ基準でフーピングする。
7.6 症状:複数ヘッドを使うと再現性が落ちる
- 可能原因:ヘッドごとのフレーム摩耗、テンション違い。
- 対処:ヘッド別にメンテ履歴を管理し、摩耗が出たフレームは交換。量産前にボーダートレースで全ヘッドの外周クリアランスを確認。複数ヘッド運用ではミシン刺繍 マルチフーピングへの理解を深め、段取りの手順書を整備する。
- 復帰の基本手順(どの症状も共通)
1) 一時停止→安全確保 2) 画面表示と実機を照合 3) 最後に正常を確認した時点へ戻る 4) ボーダートレースで再確認 5) テスト再開
付録:運用の標準化ヒント
- シーケンス用テンプレート:色1→針1、色2→針4…など、よく使う並びをカード化。
- 画面サイン表:ピンク=不適合、ホワイト=適合、をポスターで掲示。
- 位置合わせ:hoopmaster 枠固定台や自作の位置合わせボードで“誰でも同じ場所に置ける”仕組み化。
まとめ
フラット刺繍の成功は、4ステップの丁寧な積み重ねにあります。図案選択→パラメータ確認→色と針の割り当て→作業領域の適合確認を通過し、ボーダートレースで物理的に裏取りしたうえでスタートすること。これだけで失敗の大半は未然に防げます。現場の効率化には刺繍用 枠固定台やマグネット刺繍枠、異機種混在の際は刺繍枠運用の標準化が効果的です。今日の1サイクルを丁寧に記録し、次回の再現性をさらに高めましょう。
