4x4 または 5x7 のフープに対応し、合計72ブロック(8ブロック×9列)で構成。
全層を一度にフープする方法と、スタビライザーのみをフープして生地やバッティングを後から浮かせて貼る“フローティング”の2手法を比較しつつ、アップリケの正確なトリミング、背景キルティング、ブロックの直線縫い連結を丁寧に解説します。
綿100%の前布と薄手ポリエステル・バッティングを基本に、505系の一時固定用スプレーやカーブハンドルのハサミなど、初心者でも失敗しにくい道具の使い方を紹介。完成後は子どもが床で遊べる実用性を重視した仕立てを目指します。
Table of Contents
1 プロジェクトの概要(何を作るか・サイズの目安)
工事現場のモチーフで構成する“すごろく風”のキルトは、子どもがミニカーで数字列を走らせて遊べる構成です。全体は8ブロック×9列=72ブロック。第1週は最初の1列を仕上げ、後続週でサイコロやプレイディスクも用意していく流れです(本記事ではブロック制作と連結にフォーカス)。
1.1 どんな作品になるか
各ブロックは背景キルティングにアップリケや数字、標識(例:“GO”)などが入る構成。完成イメージでは複数ブロックを直線で連結し、長いストリップとして並べます。ゲームとして床に広げても扱いやすいよう、ふくらみを抑えた仕立てを選びます。

1.2 サイズとフープの選択肢
対応フープは4x4と5x7。4x4で作るとおよそ900×1000mm(約36×40インチ)、5x7では約1.1×1.2m(約44×48インチ)に仕上がります(サッシングやバインディング幅によって最終寸法は増減)。フープ選びの段階で、収納場所と遊ぶスペースを考慮すると良いでしょう。作業中にサイズ確認を繰り返す場合、brother 4x4 刺繍枠の範囲感とbrother 5x7 マグネット刺繍枠のワークエリア差を意識しておくと段取りがスムーズです。
クイックチェック
- 目標サイズは決まったか(4x4 or 5x7)
- ブロック数:8×9=72で計画できているか
- サッシング/バインディング幅の想定をメモしたか
2 准備する道具と材料
本プロジェクトは、マシン刺繍の基本セットに加え、層同士のズレを防ぐための一時固定スプレーと、アップリケの安全なトリミングに向くハサミが鍵です。
2.1 道具と消耗品
- 刺繍ミシン、フープ(4x4 または 5x7)
- カットアウェイ系スタビライザー
- 一時固定用スプレー(例:505系)
- カーブハンドルのハサミ(例:Fraliz)
- ロータリーカッター、定規、まち針、アイロン
- ミシン糸(色はデザインに応じて)
背景キルティングも入るので、縫い密度の高い工程でズレが生じないよう、フープの保持や作業姿勢を安定させます。例えば刺繍用 枠固定台を併用すれば、層重ねやスプレーの噴霧が均一になりやすく、歪みの予防に役立ちます。

2.2 生地とバッティングの選び方
前布は綿100%のコットンリネンやパーケールリネンが扱いやすく、床での反復使用にも向きます。厚手の伸縮素材(例:スキューバ)も使えないわけではありませんが、長期使用で波打ちが出やすいので本プロジェクトでは非推奨。バッティングは薄手のポリエステル(または薄綿)を選び、ふくらみを抑えます。

プロのコツ
- 前布・バッティングは先に必要枚数をカット。色分け(例:GO=緑、STOP=赤、背面=黒、サッシング=黄/白)もこの段階で決めておくと段取りがよくなります。
チェックリスト(準備段階)
- 前布は綿100%を優先、しわはアイロンで除去したか
- バッティングは薄手か、必要寸法へ裁断済みか
- スタビライザーは余裕寸法で用意したか
- 一時固定スプレーとハサミの動作確認を済ませたか
3 方法1:全層をフープして刺繍する(“GO”ブロック)
全層フーピングは、スタビライザー・バッティング・前布をまとめてフープへかける方法。縫いズレが少ない反面、縫い代部にもバッティングが入りやすく、後の連結で厚みを意識します。

3.1 スタビライザー+バッティング+前布の順でフープ
1) カットアウェイスタビライザーをフープへ装着。 2) やや小さめに切ったバッティングをスプレーで薄く固定。 3) 前布を重ね、面全体へ薄く均一にスプレーし、ピンと張る。 4) アウトライン(矩形)を2回ステッチし、デザインエリアを確定。

注意
- フープ内で生地を引っ張りすぎない。過伸長は歪みの原因です。
- スプレーは“薄く広く”。一点集中はベタつきとムラのもと。
このあと背景キルティングをステッチします。針目の詰まる工程なので、フープのテンションが安定していることを再確認しましょう。

3.2 アップリケと文字入れ
1) 六角形のアップリケ輪郭を縫う。 2) 緑のアップリケ布に薄くスプレーして配置し、タックダウンを縫う。

3) タックダウンラインぎりぎりで余り布をトリミング。カーブハンドルのハサミ(例:Fraliz)で、刃を寝かせステッチを傷めない角度に保つ。

4) サテン縁取り→“GO”文字→外周の白枠の順に仕上げる。

プロのコツ
- トリミングは“縫い目を起こして刃を寝かせる”イメージ。数ミリの余裕を残すより、タックダウン直近まで詰めた方がサテンの被りが美しくなります。
仕上げ前の取り外しとカット
- フープから外し、アイロンで面を整える。
- 縫い代からはみ出たスタビライザーとバッティングをカット。
- 最後に前布の縫い代を整えてブロック完成。

期待される見た目
- 六角形アップリケの縁がまっすぐ、サテンの段差が均一。
- 背景のキルティング密度にムラがない。
- ブロック外周は直線的で、次工程(連結)に備えた縫い代幅が揃っている。
チェックリスト(方法1)
- 前布は歪まずフラットに縫えたか
- アップリケのカバー(サテン)が均等か
- 縫い代のバッティングが過密でないか(厚みを許容内で管理)
4 方法2:フローティングで刺繍する(“1番”ブロック)
フローティングは、スタビライザーのみをフープし、バッティングと前布は後から“浮かせて貼る”手法。縫い代にバッティングを残さずに済むため、連結が薄く仕上がるのが利点です。

4.1 スタビライザーだけをフープ
1) カットアウェイスタビライザーをフープ。 2) まず矩形アウトラインをスタビライザーへ直接ステッチ。 3) その上に所定寸法のバッティングを貼り、次のアウトラインでタックダウンし外側の余りをトリム。

注意
- バッティングがタックダウンの内側にしっかり収まっているか必ず確認。
- トリム時にスタビライザーを切りすぎないようにする。
4.2 前布をフロートしてデザインを完成
1) 前布を薄くスプレーし、デザイン範囲を覆うよう配置。 2) 背景キルティング→砂利のモチーフ→数字“1”の順にステッチ。 3) フープから外しアイロンで整え、前布の縫い代をトリム。

プロのコツ
- スプレーは“面で軽く”。点で濃く吹くと針穴の周囲に糸だまりやベタつきが出やすくなります。
クイックチェック(方法2)
- バッティングはタックダウン内に収まっているか
- 前布のしわ・空気噛みはないか
- 完成後の縫い代が薄く保てているか(連結の縫いやすさに直結)
補足
- フローティングはレイヤー差し替え・位置合わせの自由度が高い分、配置時のズレ対策が要。必要に応じてマグネット刺繍枠や刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠を活用し、フープ内での保持力を高めると仕上がりが安定します。
5 ブロックの連結(列づくり)
完成ブロックを“中表”で合わせ、外周ステッチの内側すぐを直線縫いしてつなぎます。角の一致が要点です。

5.1 正確な位置合わせのコツ
- 文字やモチーフが続く場合は、対応する角と角を“まち針で貫通”させ、90度の交差が崩れない位置まで微調整。
- 上下の角も同様に合わせ、縫い目ラインに沿ってピンを上下へ寝かせて固定(横へ倒すのは不可)。
- 生地を軽く揺らしながら、ピンの抵抗が均一になる位置を探る。
5.2 直線縫いで結合
- 外周ステッチの“すぐ内側”を直線で縫い合わせる。
- 縫い代は後で片倒し/開きを選択(動画内では具体指定なし)。
注意
- ピンがステッチの進行方向に対して横向きだと、進行中にズレや波打ちが発生しやすい。
クイックチェック(連結)
- ブロックの角が上下左右とも一直線に揃ったか
- 直線縫いは外周ステッチのすぐ内側を通っているか
- 厚みが局所的に盛り上がっていないか
6 仕上がりチェックと想定ゴール
列としての第一目標は、長辺が蛇行しないことと、連結目地の厚みが均一であることです。完成見本では、数字とモチーフが一定間隔で並び、ゲーム盤らしいリズムが生まれています。

期待される外観
- 背景のキルティングがブロックごとに連続性を感じさせる。
- アップリケの周囲で糸の浮き・引きつれがない。
- 列は一直線に伸び、曲がりや段差のない接合。
次の見通し - ブロックをさらに連結して長いストリップを増やし、全9列の構成へ。

7 トラブルシューティングと回復手順
症状 → 原因 → 対処の順で、作業中につまずきやすいポイントを整理します。
1) 生地が波打つ/歪む
- 原因:フープ内での過伸長、スプレーのムラ、キルティング密度による引き込み
- 対処:張りは“ピンとフラット”止まり、引っ張らない。スプレーは薄く均一。背景キルティング前に一度外観チェックを挟む。必要ならミシン刺繍 マルチフーピングを意識して、区画ごとに位置安定を図る。
2) アップリケの縁でステッチを切ってしまう
- 原因:トリミング角度が鋭角、刃が縫い目へ向いている
- 対処:カーブハンドルのハサミで刃を寝かせ、縫い目を起こす。数ミリずつ段階的に詰める。
3) フローティングで層がずれる
- 原因:スプレー過少/過多、前布の置き直し時の引き延ばし
- 対処:スプレーは“霧状に軽く”を複数回。置き直しは面を持ち上げてから。mighty hoop マグネット刺繍枠などの保持具を使うと再現性が高まる。
4) 連結縫いで角が合わない
- 原因:ピン方向が横、押さえによる送りズレ
- 対処:ピンはステッチラインに沿って上下へ。縫い始めと終わりで一呼吸置き、角に針を落としてから方向転換。
5) 縫い代が厚くなり縫いづらい
- 原因:全層フーピングで縫い代にバッティングが残る
- 対処:方法2(フローティング)を選ぶか、方法1では縫い代の余剰バッティングをしっかり落とす。マグネット刺繍枠 brother 用やマグネット刺繍枠 11x13のようにワークエリアが安定する枠を使うと、無理なテンションをかけずに管理しやすい。
回復の小手順
- 歪みが出たブロックは、アイロンで軽く蒸気を入れ平面を回復→乾燥後に外周を定規で整え直す。
- 糸切れ箇所は、上糸・下糸のテンションを再確認したうえで同位置へ針落としし再縫い。
8 コメントから
本記事で扱う範囲について、特定機種名や糸・色指定などは動画内で明示されていません。フープサイズ(4x4/5x7)とブロック数(8×9=72)、素材選び(綿100%推奨、薄手ポリエステルバッティング)といった“運用に直結する基礎”に忠実に従えば、機種を問わず同様の手順で再現可能です。必要があればマグネット刺繍枠やhoopmaster 枠固定台等の補助で再現性を高めてください。
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補足:道具の置き場と選択の考え方
- 作業台は“スプレーの飛沫”を考慮して養生。枠や定規は噴霧前に退避。
- フープは手元の機種に適合するものを。例えばブロックサイズによってはマグネット刺繍枠 brother prs100 用やマグネット刺繍枠 babylock 用相当の選択肢が作業性を左右します(本プロジェクトは4x4/5x7の範囲で設計)。
最後に、完成列のイメージを手元のノートへスケッチしておくと、色配置や数字の流れを崩さずに量産できます。進捗はブロック単位で管理し、アイロンとトリムを“1ブロック1作業完結”で回すと、品質のブレが抑えられます。
