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ストレートステッチの導入
ストレートステッチは、布の表面に針を出し入れして一直線を引く最も基本的な刺し方です。線、面、放射、影、アクセント——どんな役にもなります。今回のテーマは、既存のチェーンステッチ(アーチ)に、扇形のストレートを重ねる組み合わせ。見た目は華やかでも、構造はシンプルなのでビギナーにも最適です。
クイックチェック
- 針目は「集合点」に向かって等間隔に放射している?
- アーチの中心付近に集めると扇のバランスが整う?
- ステッチの長さは極端にバラついていない?
注意 動画では見やすいように長めの直線を刺しています。作品では長さを調整し、布の厚さやテンションに合わせて無理のない針目を選びましょう。なお、使用布の種類は動画内で特定されていません。

作品づくりに最適なパールコットンを知る
パールコットンは、100%マーセライズドコットン。撚りのかかった単線で、6本どりなどの分割が可能な刺しゅう糸(フロス)とは異なります。糸がふっくら“立って”見え、装飾性が高いのが特徴です。サイズは主に12/8/5/3。数字が小さいほど太くなります。作者の好みは5と8——存在感は出るがデザインを“支配”しすぎない中庸の太さです。
プロのコツ
- サイズ5は店頭で入手しやすく、ソリッドと段染め(バリエーション)の両方が豊富。
- モチーフを強調したいなら太め、繊細さを優先するなら細めを選択。
- 段染めを扇形に使うと、自然な色変化がグラデーションのように広がります。

補足 刺しゅうフロスも使えますが、動画ではパールコットンを推奨。フロスと違い分割しないため、ねじれによる表情が均一に出やすいのが利点です。手刺しゅうが中心の本稿ですが、機械刺繍で枠運用を学ぶと視点が広がります(例:mighty hoopのような磁力で生地を保持するタイプ)。
仕上がりを左右する下準備
布を刺しゅう枠で安定させる
枠に布をしっかり張ることが、直線の精度を底上げします。たるみがあると針目が波打ち、直線が揺れます。木枠ならネジでほどよく締め、刺す範囲を中央に収めましょう。

均一な針目のための印付け
前回作ったアーチ状のチェーンステッチを基準に、扇の「集合点(ボトムポイント)」を布にドットで印します。アーチのほぼ中央に向けて、各扇の底が揃うように配置。厳密派は定規を使ってもOK。ここでの一手間が、後の整い感を生みます。
クイックチェック
- 集合点はアーチに対して一直線上にある?
- 扇の数と位置は全体のリズムに合っている?
針に糸を通し、結び目で固定
バリエーション糸(段染め)を選び、針に通します。動画の結び方は、針に糸を3回巻き付け、指でつまみながら下へ引き下ろす方式。小さく締まった結び目ができ、裏側での固定が安定します。

注意 結び目は大きく作らないこと。パールコットンは撚りが強く、結び目が厚いと表面に影響します。必要なら2度目の固定は裏で行いましょう。機械刺繍ユーザーは、スナップ式枠(例:snap hoop monster)の固定感の違いも知っておくと、布のテンション管理に応用が利きます。

ストレートステッチ実践ステップ
方法1:一本ずつ刺して扇形を描く(見やすさ重視)
- 印を付けた集合点から針を表へ出す。
- まっすぐ上方向に向かって、最初の直線を刺す。
- 合計5本で扇形(半輪)を作る。目安として、1本目・3本目・5本目を先に配置し、残りを間に入れると均等に。

ステッチの位置決め 中心線(3本目)を先に決めると、左右の配分が明確になります。動画でも、見やすさを優先して長めに刺し、均一性を確認しています。

プロのコツ
- 表面の整い感を優先するため、裏側の渡り糸は多少長くなってもOK。
- 扇形はアーチのリズムに合わせて、各ブロックの角度を微調整。

結果イメージ 5本が集合点で出会い、上に向かって扇状に広がると、チェーンのアーチを抱きかかえるような陰影が出ます。段染め糸なら、自然な色の移ろいが扇の広がりを強調。

方法2:裏糸を短く抑える“糸節約”テク
- 一本を刺したら、次は前の出入り口のすぐそばから針を出し入れ。
- 裏側では、ほぼ同じ端から次の端へ最短距離で移動するイメージ。
- 表面は方法1と同じ扇形に見せつつ、裏の渡りを短縮。

コツと注意
- 針を「一目分ずらして」出すことで、裏の糸消費を抑えます。
- 糸を引き過ぎると表がつれやすいので、テンションを均一に。

ビギナー向けアドバイス 方法1は視認性が高く、形を整えやすいメリット。方法2は布の裏がすっきり仕上がり、糸を長持ちさせられます。作品や布厚に応じて選びましょう。機械刺繍派は、メーカー純正・互換枠のサイズ感(例:brother 刺繍枠)を理解しておくと、モチーフ配置の思考が磨かれます。
ベース活用:チェーンステッチ×ストレートの重ね
ベースにアーチ状のチェーンステッチがあることで、扇形の向きとリズムが自然に揃います。チェーンの輪に沿って放射させると、境界が柔らかく馴染み、デザイン全体にストーリーが生まれます。別の布端に向けてラインを伸ばすと、ボーダー的にも活用可能です。ブランドや機種は動画で特定されていませんが、他社の機械刺繍に触れると発想が広がります(例:janome 刺繍ミシンのサンプル観察など)。
糸管理と仕上げのコツ
糸が尽きる前の段取り
残りが少なくなってきたら、無理に次の一本へ進まず、刺し終えるポイントを見極めます。動画では、残量を見つつ最後の一本を刺し切ってから裏へ回しています。

裏での固定と二重の安心
- 布を裏返し、既存のステッチに糸をくぐらせて結ぶ。
- 必要に応じてもう一度結んでから、余り糸をカット。
この二段階で、ほどけにくさがアップします。結び目は小さくすっきりが基本です。

プロのコツ
- 結び目の位置は厚みが集中しない場所を選ぶ。
- 糸の通し直しは無理にせず、新しい糸に交換。動画でも、次のステッチ前に糸替えを明言しています。

クイックチェック
- 結び目はしっかり締まっている?
- 表側にひきつれが出ていない?
- 裏の渡りは最短で整理されている?
最後に余り糸を整えます。裏の見た目も作品の一部。丁寧に仕上げるほど、全体の完成度が上がります。

完成見本と次の一歩
仕上がりは、アーチ状チェーンの上に扇形の直線がリズミカルに並ぶデザイン。段染め糸の色変化が、同じ形の反復に抑揚を与えます。動画でも最後に枠を外して全体を確認し、シリーズ継続の案内で締めくくられています。

継続練習のアイデア
- 扇のサイズを変え、密度のグラデーションを作る。
- 扇の中央一本だけ糸色を変え、リズムを演出。
- チェーンベースを波線やジグザグに替えて、動きのある境界に。
コメントから(要約)
- 「イントロがワイルド!楽しい動画」とポジティブな感想。
- 「最初の結び目の作り方は?」という質問には、針に3回巻いて下へ引く手順が動画内で実演(約03:11)。
- 「できたけど、始め方が少し不安」という声も。上の“下準備”と“方法1の基準線(1・3・5本目)”を再確認すると安定します。
注意
- 布の種類、ブランド品の詳細、厳密な所要時間は動画内で言及されていません。サイズの好み(5・8)や段染め推しは講師の個人的所感です。
プロのコツ(まとめ)
- 見やすさ優先で長めに刺してから、作品では長さを最適化。
- 「1・3・5本目」を先に刺して均一化。
- 段染めは扇の広がりと相性抜群。
- 裏は“結ぶ→くぐらせる→もう一度結ぶ”で安心。
機械刺繍ユーザーへのヒント(補足) 手刺しゅうの学びは、機械刺繍の枠運用にも応用可能。メーカーや方式は異なっても、「布のテンション」「配置の均一」「糸の節約」は共通課題です。たとえばbernina 磁気 刺繍枠のような固定機構の特徴を知ると、手でも枠張りの勘所がつかみやすくなります。産業機のフレーム運用例(barudan 刺繍枠など)を観察すると、量産現場の“均一化のロジック”を学ぶヒントにも。
さらに深める
- 直線の角度差で陰影をコントロール
- 扇の重なりで花弁風のモチーフに応用
- チェーン以外(スプリット、アウトライン)を土台にして対比を楽しむ
最後に 扇形のストレートステッチは、単純な「直線」の集合で、驚くほど豊かな表情を作れます。パールコットンのサイズや段染めの選択、印付けの丁寧さ、裏処理の確実さ——この4点を押さえれば、どの生地でも安定した結果に。続編では、別のステッチとの重ねや配置のバリエーションにも挑戦してみましょう。機械刺繍派の方は、枠の研究(例:磁気 刺繍枠の使い分け)も合わせて視野を広げると、作品作りの戦術が増えます。
