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Smartstitchメイン画面の見方(まずは“状態”を読む)
Smartstitchの多針刺繍機は生産性の高い機械ですが、慣れていないと操作画面が複雑に見えます。重要なのは「ボタンを押す」ことではなく、画面の表示が“機械の動き”にどう直結しているかを理解することです。
現場で起きる「機械エラー」の多くは、実はオペレーターと画面の“意思疎通ミス”です。この解説では、アイコン表示を実際の動作に結びつけて整理し、段取りの迷い(押してみないと分からない状態)を減らします。
smartstitch 1501で量産を回していくなら、まず操作画面を“読める”ようになるのが最短ルートです。ここでは、スタートを押す前に不安要素を潰し切るための確認順も含めて説明します。

メイン画面で最初に見るべき3点
メイン画面はダッシュボードです。闇雲に眺めるのではなく、次の順番で“状態”を確認する癖をつけてください。
- 状態色(ステータス):準備(安全)なのか、縫製実行(危険)なのか
- 針(色)状態:現在アクティブな針/色はどれか
- 速度上限(RPM):いまの回転数設定は適切か
動画の画面表示で確認できる主な指標は次のとおりです。
- サイクル刺繍モード:同じデザインを繰り返す設定のオン/オフ
- 主軸角度:基準は 100°(機械的なニュートラル)
- ヘッドライト/作業灯:確認・点検の基本ツール
- 刺繍進捗:パーセンテージ表示
- 速度(RPM):縫製スピードの調整



手順1 — 主軸角度を100°(ニュートラル)に初期化する
操作: 画面上部の100°アイコンをタップし、緑のチェックで確定します。 確認: ヘッドが一連の動作をして停止します。針棒が揃い、機械が落ち着いた状態になっていることを目視で確認してください。
なぜ必要か(現場目線): 100°は、作業の基準位置です。糸切り、トレース、針の手動操作などを行う前にここへ戻すことで、機械の動きが予測しやすくなり、不要なトラブルを減らせます。
注意:安全上の重要事項
リセット動作中は、針周りに手・工具・衣類が近づかないようにしてください。ヘッドや針が予告なく動きます。
手順2 — 糸経路確認は作業灯のオン/オフをセットで使う
操作: ヘッドライト(電球)アイコンを切り替えます。 確認: 針板周りの影が減り、糸の通りやすさ/見えやすさが上がります。
使いどころ(“見える”だけで終わらせない):
- 糸くず確認:下糸周り(ボビンケース付近)の綿ぼこりを見つけやすくなります
- 針の異常:曲がりや欠けは光の反射で違和感が出ます
- 糸経路:テンションディスクの“間”に糸が入っているかを確認します(軽く引いて抵抗があるか)

手順3 — 速度(RPM)は“目的に合わせて”調整する
操作: 画面の+/−でRPMを変更します。 動画の設定例: 820 RPM。
現場の考え方: 機械は高速で回せますが、速度を上げるほど小さなズレや糸トラブルが増幅します。初回の段取り確認や素材が不安定な場合は、まず低めで安定させるのが安全です。

デザイン管理:針数とサイズ確認が“失敗コスト”を下げる
量産で利益を出すほど、縫う前の確認が重要になります。ここで30秒使うだけで、後工程のやり直しを避けられます。
手順4 — パターン管理を開き、デザイン仕様を確認する
操作: フォルダ(パターン管理)アイコンを開き、デザイン(例:Coffee Shop)を選択します。 確認:
- 針数(Stitch count):10,914
- サイズ:86.4 × 86.4 mm


枠に入るかの判断: デザインサイズが枠内に収まるかは、画面上の数値で必ず確認します。枠の内側ギリギリだと、トレース時に危険域が見つかりやすく、枠干渉のリスクが上がります。
編集メニュー(回転など)を使うときの注意
操作: ポップアップメニューから回転/向きの画面に入ります。


補足: 画面上での回転は、素材や伸縮方向によって仕上がりの癖が出やすくなります。可能であれば、枠張り(枠入れ)側で向きを整え、デザインは基本角度のまま運用すると再現性が上がります。
必須設定:色替えと自動運転(止めない段取りを作る)
ここを整えると、オペレーションが“見張り”から“管理”に変わります。
手順5 — 色替え/スタート動作を「全自動」に設定する
操作: 設定画面で 「Automatic color-changing and automatic start」 を選択します。

考え方: 通常のロゴ刺繍では、色替えのたびに止めるメリットは小さく、停止が増えるほど再スタート時の糸絡みなどのリスクが増えます。必要な場合(途中で手作業が入る工程など)以外は、自動運転で流れを切らないのが基本です。
手順6 — ピンク(準備)とブルー(確認)の違いを理解する
操作: ロック/ステータスのアイコンを切り替えます。
- ピンク:準備状態(設定変更や枠移動がしやすい)。スタートできない状態
- ブルー:確認状態(縫製実行の状態)。スタート操作が有効

チェックポイント: 「スタートが押せない/反応しない」と感じたら、まずステータスがピンクのままになっていないかを確認します。
枠選択:マグネット刺繍枠(430×390)プリセットの設定
枠の選択は、機械に“安全な可動範囲”を教える工程です。ここがズレると、位置ズレだけでなく枠干渉のリスクも上がります。
手順7 — 「Choose frame」で枠プロファイルを選択する
操作: 「Choose frame」メニューを開き、枠アイコンを選びます。丸枠やキャップドライバーに加えて、Magnetic frame の項目が表示されます。動画で示されているプリセットは 430×390 です。
smartstitch マグネット刺繍枠 が機械側メニューにプリセットとして用意されている点は、運用上の大きな利点です。枠プロファイルを正しく合わせることで、枠の中心や可動範囲の前提が機械と一致しやすくなります。
補足(動画内情報): S-1001のパスワードは 87181066。

チェックポイント: 選択後、画面に縫製エリア(枠の形)が表示されます。表示形状が、手元の枠(実物)と一致しているか確認してください。

マグネット刺繍枠を使う判断軸(枠跡・作業負担の軽減)
想定: シャツをまとめて加工するケース。
- 従来の刺繍枠は、締め込みやテンション調整に手間がかかり、素材によっては枠跡が残りやすくなります。
- 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 は、磁力で押さえる構造のため、段取りの手数を減らしやすいのが特徴です。
切り替えの目安:
- 枠跡が残って戻りにくい
- 枠張り作業の負担が大きい
- 枠の締め具合が人によってブレる
注意:マグネットの取り扱い
マグネット刺繍枠は強い磁力を持ちます。
* 挟み込み注意:合わせ面に指を入れない
* 周辺機器への配慮:磁気の影響を受ける物は近づけない
消耗材・段取りの選び方(考え方の整理)
作業前に、素材に合わせて“枠とスタビライザー”の組み合わせを決めます。
1. 素材の安定性は?
- 安定(デニム、キャンバスなど):
- 枠: 一般枠またはマグネット刺繍枠
- スタビライザー: 中厚手のティアアウェイ
- 伸びやすい(ポロ、Tシャツ、ニット):
- 枠: マグネット刺繍枠(枠張り時に引っ張り過ぎを避けやすい)または一般枠(要注意)
- スタビライザー: カットアウェイ
- 毛足がある(タオル、フリース):
- 枠: 厚みを許容しやすい枠
- スタビライザー: ティアアウェイ+水溶性トッパー
ヘッド側キーパッド:トレースとインチング/糸切りを安全に使う
タッチパネルは段取り、キーパッドは実行操作に向きます。
手順8 — トレース(外周走行)で安全域を確認する
操作: トレース機能(外周に沿って枠を動かす)を選びます。 確認(縫う前の最終点検):
- 目視:針/レーザーが枠の縁に近すぎないか
- 目視:厚い段差(ファスナーや縫い代など)を横切らないか
- 目視:狙った位置(印)に対してセンターが合っているか

現場のコツ: トレースは、画面上のセンターと実物のセンターが一致しているかを確認できる重要工程です。省略すると、ズレに気づくのが“縫った後”になります。
手順9 — ヘッド側キーパッド:移動・インチング・糸切り
操作: 矢印キーで枠移動、機能ボタンでインチング/糸切りを行います。
「3秒ルール」: 動画で示されているとおり、Inching(手動回転/針位置操作)やTrimming(糸切り)を押した後は、3秒以内にEnterで確定が必要です。
- 意図しない誤操作を防ぐための仕様です。
- 反応しない場合は、時間切れの可能性が高いので、もう一度「機能→Enter」の順でやり直します。


準備(Prep)
画面操作の前に、物理側の条件を揃えます。ここがブレると、後工程で原因不明の不良が出やすくなります。
見落としやすい準備物
作業で効く“見えない道具”の例:
- 予備の針
- ボビン糸
- 糸端処理用のピンセット
複数人で運用する場合、ミシン刺繍 用 枠固定台 を使うと枠張り位置の再現性が上がり、やり直しを減らしやすくなります。
準備チェック(未確認のまま進めない)
- 針の状態:欠け・曲がりがない
- 下糸周り:ボビンケース周辺に糸くずが溜まっていない
- 糸の供給:糸が引っ掛からずに出る
- 可動スペース:枠が後方まで動けるクリアランスがある
設定(Setup)
画面設定と実機状態を一致させます。
- 主軸リセット:100°ニュートラル
- デザイン読み込み:針数・サイズ確認
- 枠プロファイル:画面の枠=実物の枠(特にマグネット刺繍枠)
- 色順:針順(例:1番=赤、2番=青)
- ステータス:ピンク→ブルーへ
設定チェック
- 枠一致:画面プロファイル=実物枠
- トレースOK:危険域(枠縁/段差)を避けている
- 自動設定:自動色替え+自動スタート
- ステータス:ブルー(確認)になっている
運用(Operation)
ここからが実縫いです。
運用中の確認ポイント
- スタート直後:最初の動きと糸の出方を確認
- 最初の数十〜100針:糸端が暴れていないか、絡みの兆候がないかを見る
- 異音:普段と違う打音が出たら一旦停止して原因を切り分ける
補足: 15本針 刺繍ミシン のような多針運用では、よく使う色を固定しておくと段取り替えの時間を短縮しやすくなります。
大量の枠張り作業がある場合、マグネット刺繍枠 用 枠固定台 を併用すると、枠の着脱作業の負担を下げやすいという考え方もあります。
運用チェック
- 速度:無理のないRPM
- 目視:生地がバタついていない
- 安全:可動部に手を入れていない
品質確認(Quality Checks)
停止=完了ではありません。仕上がりを短時間で判断します。
目視・触診のポイント
- 下糸の見え方:裏面で下糸が極端に出過ぎ/出なさ過ぎになっていないか
- シワ(パッカリング):デザイン周辺が波打っていないか
- 位置合わせ(レジスト):輪郭と塗りがズレていないか
トラブルシューティング
不具合が出たら、まず低コストで切り分けます。
| 症状 | 主な原因 | まずやること(低コスト) | 予防 |
|---|---|---|---|
| 鳥の巣(糸絡み) | 糸掛け不良、テンション不安定 | いったん糸を掛け直す | テンション部に確実に通す |
| 針折れ | 枠干渉、枠プロファイル違い | 枠選択を確認(実物と一致しているか) | 縫う前に必ずトレース |
| 糸切れ | 針の劣化、速度過多 | 針交換→速度を下げる | 素材に合う針を使う |
| 枠跡 | 締め過ぎ、素材に不適 | 可能ならスチーム等で回復を試す | マグネット刺繍枠 の検討 |
| スタートできない | ステータスがピンク | ロックをブルーへ | 「トレース→ブルー→スタート」を習慣化 |
| インチング/糸切りが効かない | タイムアウト | 機能→Enterをすぐ押す(3秒以内) | 手順を固定化 |
まとめ(Results)
Smartstitchの画面操作を理解すると、刺繍は“勘”ではなく“再現性”で回せるようになります。100°リセットで基準を作り、デザインの針数・サイズを確認し、ステータスをブルー(確認)にしてからスタートする。この流れを徹底するだけで、段取りミスの多くは防げます。
さらに、機械側に Magnetic frame 430×390 のプリセットが用意されている点は、マグネット刺繍枠 使い方 の運用を組み立てるうえで大きな助けになります。枠選択→トレース→実行の順で、機械の“前提”と現物を一致させ、ムダな停止とやり直しを減らしていきましょう。
