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SmartStitch 2025年5月アップデート概要
刺繍は感性の世界ですが、コンピュータ刺繍機の運用は「正確さの積み重ね」です。SmartStitchを2025年5月にアップデートした方は、機能が増えた一方で、タッチパネルの“いつもの感覚”が少しズレたように感じたかもしれません。
慣れているオペレーターにとって、アイコンは「見れば分かる」共通言語です。しかし、家庭用の単針機から多針刺繍機へ移行したばかりの方にとっては、できることが多いほど「どれを押せばいいのか分からない」状態になりがちです。
そこで本記事では、単なる設定変更ではなく、操作時の迷いを減らすための“認知負荷の軽減”として、ボタンにテキストを重ねて表示する機能を有効化します。迷いが減ると、現場で本当に重要な「枠張り」「糸調子」「段取りと生産スピード」に集中できます。


初心者にテキスト表示が効く理由
なぜテキスト表示が重要なのか。業務用刺繍では「迷い=ロス」です。
たとえば、ジャケットなど単価の高い製品を刺繍枠にセットして、これからトレース(縫い範囲確認)をしたい場面で、「これがトレース?それとも枠移動?」と一瞬でも迷うと、不安が増え、手が止まり、段取りが詰まります。
2025年5月のアップデートでは、ホーム画面の青い機能アイコンに、機能名のテキストが重なって表示されるようになりました。これは次のような現場で特に効果があります。
- 導入直後のオーナー:ホーム画面の多数のアイコンをまだ覚えきれていない。
- 複数人で運用するショップ:家族やパートスタッフが代わりに触るとき、誤操作を減らしたい。
- 心理的ハードルの低下:「押し間違えそう」という不安が減り、操作が安定する。
手順:Professional parameters へ入る
ここからは実作業の手順です。画面上の遷移をそのまま追ってください。
Step 1 — ホーム画面から[Settings]を開く
- 入口を探す:ホーム画面のグリッド内にある歯車アイコン([Settings])をタップします。
- 目的の項目:次の設定画面のグリッドで、赤いアイコンの[Professional parameters]を選びます。
現場のコツ(操作感チェック):指先が乾いていたり、タッチが入りにくい場合は、動画のようにスタイラスを使うと確実です。タップ後に画面が切り替わる(またはボタンが反応する)ことを必ず確認してください。


チェックポイント(画面の見た目で確認)
- 画面遷移:カラフルなホーム画面から、設定用のグリッド画面へ切り替わっている。
- 目的アイコン:[Professional parameters](赤/オレンジ系のアイコン)が判別できる。
期待される状態
- ここが「入口」です。多くの場合、数値パスワード入力を求められます。
注意:設定変更の途中で電源を切るのは避けてください。変更を確定させる前に電源を落とすと、設定が反映されないだけでなく、環境設定が不安定になる可能性があります。基本はホーム画面まで戻ってから電源操作を行います。
SmartStitch の新旧パスワード(入れないときの対処)
ここでつまずく方が多いポイントです。ファームウェア更新で、[Professional parameters]のパスワードが変わることがあります。
画面に「can not enter」と表示される場合、手順が間違っているというより、パスワードが合っていない可能性が高いです。
- 手順A(旧コード/1501で使われていた例):
66668888 - 手順B(新コード/共通コード):
87181066
smartstitch 1501 などのキーワードで情報を探している方の多くは、この「パスワード違い」が原因で先に進めなくなります。メニューの場所は合っていても、鍵(コード)が変わっているケースです。
実務メモ(詰まらないために)
- 入力はゆっくり確実に:タッチパネルが数字を取りこぼすことがあるため、連打せず一桁ずつ。
- 桁数確認:入力表示(
**など)の数で、押し間違い(ダブルタップ)を早めに発見します。 - 無理に別メニューへ行かない:似た名称の別メニューに入ると、意図しない設定に触れるリスクが上がります。

「Main interface button text display」を有効化する
ここからは設定変更です。触るのは1か所だけに絞ります。
Step 2 — [Embroidery Assistant Parameters]へ進む
- メニュー選択:番号付きリストから 6. Embroidery Assistant Parameters を選びます。
- 対象項目:次の画面で 4. Main interface button text display を探します。
- 切り替え:行をタップし、右側の値が No → Yes に変わることを確認します。


チェックポイント(戻る前に確認)
- 項目番号:変更しているのが「#4(ボタンのテキスト表示)」である。
- 状態:右側の表示が Yes になっている。
期待される状態
- 設定は記録されますが、画面表示はすぐに変わらない場合があります。その場でテキストが出なくても異常ではありません。 反映には再起動が必要です。
現場のコツ(危険ゾーンの把握)
この階層には初期化系の項目も見えることがあります。作業中は「今回触るのは#4だけ」と決め、他は触らない運用にすると安全です。
枠/トレース画面のレイアウト変更点を確認する
テキスト表示で分かりやすくなる一方、ボタン配置が一部移動しています。まずは反映のための再起動を行います。
Step 3 — 再起動(必須)
- 戻る:[Back]または[Home]でホーム画面まで戻ります。
- 電源OFF:本体の主電源を OFF。
- 待機:10秒数えてから(画面が完全に落ち着くのを待つ)。
- 電源ON:主電源を ON。
- 起動確認:SmartStitchのロゴ表示~初期化を待ちます。


注意:起動時は枠(フープ)を保持するアームが動いて原点出しを行うことがあります。手や工具、ケーブル類を可動域に置かないようにしてください。
Step 4 — ホーム画面でテキスト表示を確認
起動後、ホーム画面の青い機能アイコンを見てください。各アイコンに機能名のテキストが重なって表示されます(例:Float Action、Design Management など)。
smart stitch 刺繍ミシン 1501 を使って在宅で受注を回している場合、この表示があるだけで「人に聞かないと触れない」状態から抜けやすくなります。


Step 5 — [Frame/Move Frame]内の移動したボタン位置を確認
アップデート後、[Move Frame]サブメニュー内で、重要な2つの機能の位置が変わっています。
- 「Change to needle 1」:針位置を1番へ戻す(糸掛けや確認の起点にする)操作。右下へ移動。
- トレース系(Trace):デザインが枠内に収まるか確認する機能。上側へ移動。



なぜ重要か:段取りの「摩擦」を減らす
刺繍現場でいう“摩擦”とは、サイクルタイムを遅くする要因です。ボタンの位置が変わるだけでも、探す時間が積み重なります。
そして、現場でさらに大きい摩擦になりやすいのが枠張りです。
枠張りでよく起きる悩みの例:
- 標準の樹脂枠は締め加減が一定になりにくい。
- 厚物(パーカー等)で保持が甘いとズレやすく、枠跡も気になる。
- 左胸ロゴの水平出しに時間がかかる。
この差が、趣味運用と業務運用のボトルネックになります。
- ケースA:単発中心なら標準枠でも回る。
- ケースB:50枚などのロットでは、枠張り時間が工数の大半になりやすい。
すでに smartstitch 刺繍枠 や Smartstitch 刺繍枠 を調べている方は、ここが改善ポイントになりやすい、という視点を持つと判断が早くなります。
マグネット刺繍枠は、上枠を「パチン」と合わせるだけでテンションが一定になりやすく、ネジ締めの手間を減らせます。
注意:マグネット刺繍枠は強力な磁力で吸着します。指を挟むと危険なので、リングの間に指を入れないでください。
判断フロー:手作業の枠張りを続けるか、治具・枠を見直すか
1. 主な素材は?
- 薄手の綿/ニット:標準枠でも対応しやすいが、枠跡には注意。
- 厚手(パーカー等):保持が難しく、枠の見直しを検討しやすい。
2. 生産量は?
- 週10点未満:標準枠で十分なことが多い。まず手順の安定化。
- 1回のロットが多い:枠張りの時間短縮が効きやすい。
3. 手首や指がつらい?
- つらい:締め付け作業の繰り返しが負担になるため、運用の見直し余地あり。
見直しをする場合は、mighty hoop smartstitch 用 や smartstitch mighty hoop マグネット刺繍枠 のような互換フレーム情報もあわせて確認すると、選定の方向性が定まりやすくなります。
Prep
段取りの差が、そのまま品質と生産性の差になります。画面操作の前に、周辺準備を整えます。
見落としがちな準備物と事前チェック
初心者ほど本体操作に意識が寄りがちですが、刺繍は「周辺環境」で安定します。
- スタイラス:パスワード入力や細かいタップで有利。
- スタビライザー:素材に合った選定が必須(設定変更では代替できません)。
- 針:糸切れ・糸切れ風の不具合は、針交換で改善することがあります。
- 手順メモ:どちらのパスワードが通ったか(
66668888/87181066)を作業ノートに残す。
Prepチェックリスト(作業前)
- ファームウェア:2025年5月の更新が入っている。
- パスワード:
66668888と87181066を手元に控えた。 - 安全:可動部周辺に工具や小物がない。
- 現状把握:「button text display」が現在どうなっているか意識しておく。
- ツール:スタイラスを用意。
Setup
本番前に「設定が効いているか」を短時間で確認します。
2分のミニ訓練(複数人運用向け)
ショップ運用なら、設定を入れて終わりではなく、操作が定着するように短い確認を入れます。
- 指差し確認:[Design Management](表示が出たアイコン)を指して、何をする場所か確認。
- 導線確認:[Frame/Move Frame]まで迷わず行けるか。
- 位置の更新:移動後の「Change to needle 1」を指せるか。
- トレース:トレース系の位置を指せるか。
Setupチェックリスト(反映確認)
- 再起動:電源OFF→ONを実施した。
- 表示:青いアイコンにテキストが出ている。
- 導線:[Move Frame]へ迷わず入れる。
- 機能位置:「Change to needle 1」(右下)を見つけられる。
- 機能位置:トレース系(上側)を見つけられる。
Operation
今後、別個体への設定や初期化後の復旧にも使える、短縮版の手順です。
手順(短縮プロトコル)
- 入口:Home → Settings(歯車)→ Professional parameters
- 認証:
66668888(旧)または87181066(新) - 項目:6. Embroidery Assistant Parameters
- 切替:4. Main interface button text display → Yes
- 反映:ホームへ戻る → 電源OFF → 10秒 → 電源ON
- 確認:テキスト表示と、枠/トレース画面のボタン位置
チェックポイントと期待結果
- チェックポイント:パスワード入力
- 合格基準:「can not enter」が出ず、パラメータ一覧に入れる。
- チェックポイント:切替
- 合格基準:右側の値がYesになっている。
- チェックポイント:再起動
- 合格基準:ホーム画面でテキストが表示される。
作業後チェックリスト
- 視認性:立ち位置から文字が読める。
- 記録:通ったパスワードをログに残した。
- 安全:可動域が片付いている。
- 次工程:糸掛け・試し縫いに移れる。
Quality Checks
ソフトウェア的な品質は「バグがない」ことですが、刺繍現場の品質は「迷いなく操作できる」ことです。
良い状態の目安
- 迷いがない:新しい人でも、目的の機能にすぐ到達できる。
- 教育時間が短い:説明が長引かない。
- トレースが習慣化:トレース機能を毎回使える(=見つけられる)。
Troubleshooting
不具合時は当てずっぽうで触らず、症状→原因→対処の順で切り分けます。
1) 症状:パスワード画面で「can not enter」
- 原因候補:ファームウェアとパスワードが不一致。
- 対処:
66668888がダメなら87181066を試す。 - 補足:[Professional parameters]に入っているかを再確認(似たメニューと取り違えない)。
2) 症状:設定をYesにしたのにテキストが出ない
- 原因候補:再起動していない。
- 対処:主電源でOFF→ONを実施し、起動完了後に再確認。
3) 症状:糸切れ/糸が拾えない(機械側)
- 原因候補:針の向きが不適切。
- 対処:業務用針は前後があるため、正しい向きで差し込み、わずかに右へ角度が付く状態を確認する(コメントでの回答に基づく)。
注意:使用済みの針は危険です。専用の容器にまとめて廃棄してください。
4) 症状:フォーム(立体)刺繍の文字がきれいに出ない
- 原因候補:データ(パンチ/デジタイズ)がフォーム用ではない。
- 対処:ミシン設定の問題と決めつけず、フォーム用に作られたデータを使用する。フォーム用は、端の処理(キャップ)やサテンの密度、下縫いの考え方が異なり、内蔵フォントだけでは対応できないことがある(コメントでの回答に基づく)。
smartstitch s1501 を検討している方から「帽子やフォームはできる?」という話題が出やすいですが、仕上がりを左右するのは機械というよりデータ設計の比重が大きい点を押さえておくと、遠回りを減らせます。
Results
この手順で、SmartStitchの操作画面を「勘で押す」状態から「見て判断できる」状態へ改善できます。
- テキスト表示が有効になり、迷いが減る。
- 枠/トレース画面の配置変更を把握でき、探す時間が減る。
- さらに、段取りのボトルネック(枠張り)を見直す視点が持てる。
刺繍は変数の管理です。画面操作の迷いを減らし、枠張り工程も安定させる(必要なら mighty hoops smartstitch 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のような選択肢も含めて検討する)ことで、ミスの原因となる変数を減らせます。次はデザインを読み込み、トレースで安全確認をしてから本縫いへ進めましょう。
